ある日、眉間にしわを寄せ「何しはるの?」と、不安気な様子で検査室に入られた方がいらっしゃいました。検査を始めるうちに「頭の体操みたいやね」と集中し、ポツリポツリと日々の様子や昔の話を口にされ、「なんか楽しかったわあ」と朗らかに検査を終えて部屋を出て行かれました。
神経心理検査は、画像検査と共に認知症診断に欠かせないものです。心理士としては、診断のための検査にとどまらず、その方が保持している機能や今後の生活に役立つその人らしさも見つけ引き出すことを心掛けています。
また、検査の合間にできるだけ待合室にいる方に声をかけたいと思っています。私は、心理士の仕事は目に見えないものを共有し、共に抱えていくことだと考えています。病とともに生きることを全うされようとしている方々の傍らで、手を添え心を添えていきたいと思います。
略歴
長野県出身。お茶の水女子大学卒業後、高校教諭を経て臨床心理士資格取得。市立豊中病院勤務を経て和クリニックへ。日本老年精神医学会認定専門心理士、HAPPYプログラム使用権取得コース修了、タクティールケアIコース修了、シナプソロジーインストラクター養成コース修了
所属学会
日本心理臨床学会・日本精神分析学会・日本老年精神医学会・日本老年臨床心理学会
「病気があってもその人らしく、その人が暮らしたい場所で安心して暮らせるように、手助けしたい。」という思いで患者さんに接している先生を尊敬しており、とても共感しています。私も看護師として、少しでも本人や家族の気持ちに寄り添って手助けできたらという思いです。
自分の得意分野のことをいきいきと話す患者さんや、とてもよい表情で好きなことや趣味の話をする患者さんは、その人らしさが出ていて、そういう場面での患者さんとのふれあいが私は好きです。
認知症であっても、いろんな経験をした長い人生を生きてきた先輩ですので、患者さんとのふれあいの中でいろんな事をたくさん教えていただきたいと思っています。
私が診察をする時に忘れないようにしているのは「病気を診ずして病人を診よ」という言葉です。
同じ診断名、同じ検査の点数の方でも患者様は一人一人違います。
喜びを感じること、大切にしていること、困っていることは人それぞれです。
認知症という病気だけを診るのではなく、1人の人間としての患者様を診察させていただき、少しでも苦痛や困っていることが改善し、
その人らしい生き方ができるお手伝いがしたいと思っています。